Storymi:den ストーリー
大嫌いだった計算プリントの記憶…
ベネッセ、小学校教員、うんこプロデューサーと、硬軟おり交ぜ、教育に関わってきた開発者(以下、私)。 私自身も、子どもの頃、勉強が大嫌いでした。 特に嫌だったのが計算プリント。夏休み前にプリントをドサッと渡され、いやいや取り組み、答えをこっそり丸写しして、あっさりバレて怒られて…。
大人になり、教育に関わるようになっても基本的に計算練習というものは、楽しいものではないけれどもやるもの、やらせるもの、という考え方が主流。もちろん、そういったトレーニングが必要なものであるということも理解はしながら、心のどこかで「どうにか楽しくできないか」という思いは常にありました。
ちょっとした工夫で授業の導入が
エンターテイメントに
あるとき、小学校教員時代に何気なくやった工夫を思い出しました。当時は、5 年生の習熟度別授業で、算数が苦手な子ども達を少人数で担当していました。教える内容は最大公約数。
ふと思い立ち、PCを使って簡易版のデジタルフラッシュカードを作ったのです。クリックするとモニターにランダムで表示される2つの数字。それを見て、最大公約数を子ども達は答えます。答えたら、もう一度クリック。正解がモニターに表示され、「やった!」「あー! そうか! 間違えた!」と盛り上がりました。
[ 計算 ]を、遊び・ゲームにしてしまえないか…
思いのほか好評だったので、毎回授業の冒頭5分間。デジタルフラッシュカードでウォームアップしてから、授業に入るということが習慣化しました。プリントと何が違うの? と聞くと「何が出てくるのか分からないのがドキドキする」「早く答えてやるぞって思うと集中する」と。
私としては「ちょっとした工夫」だったのですが、それだけで「やらされている作業」が「遊び(っぽく)」なったのだと思います。
そんな些細な「やり方の違い」だけで、楽しくなるのであれば、もっとできることがあるのではないか。そう思ったときにイメージとして浮かんできたのはトランプの「スピード」でした。単に隣り合う数字を並べるだけなのに、大人も子どもも夢中になって取り組める。テンポ感よく、短い時間で決着もつく。ああいうイメージで計算を遊べるもの…。
お笑い数学教師タカタ先生との
出会いから生まれたブレイクスルー
そんなことを考えているときに限って、面白い出会いというものは用意されていまして。吉本所属のお笑い芸人かつ、現役高校数学教師のタカタ先生。彼と別件の打ち合わせをしていたとき、何気なく考えを伝えてみました。
すると「それ! できるんじゃないですか!?」との返事が。
一人で考えていると自信がもてなくても、背中を押してもらえるとどんどん自信が沸いてアイデアも広がっていく。それは大人も子どもも同じで、もちろん私の場合も同じでした。そこからはタカタ先生と私でお互いアイデアを出し合い、ゲームとしての形が見えてくるまであっという間でした。その後も色んな方にテストプレイしてもらい、意見をもらう度にゲームとしてブラッシュアップされていきました。
「楽しい」は子どもにとって最高のサポーター
「楽しい」ということには無限の力が、詰まっています。人間、楽しいことだったらいつまでもできる。私は大人になってから、ようやく「数学」というものが、いかにロマンに溢れ、楽しい世界なのかということを知りました。それは、色んな本や作品や人との出会いのおかげでした。
きっと、子ども達にとっても「数」と向き合うことが「やらなければならないもの」になる前に「楽しいもの」として向き合う経験があれば、人生を少し豊かにするきっかけになるかもしれない。そのきっかけを、このゲームが少しでもお手伝いできれば。そんな風に思っています。
すなばコーポレーション 門川良平